共に行動することの少ない俺達監察方。故に此処に来てからまだ数える程しか言葉を交わしていない。
まぁ監察に回されたっちゅうことはそれなりに頭は働く筈や。
監察になった時点で俺が副長付きなん知ったやろから特に警戒されとるんやろな……。
「着替えたらすぐに出ますので」
「……何故そのような所から」
髪にかかった蜘蛛の巣を払いながら薄く笑む俺に、篠原は手にしていた本を置き胡座を組み直して怪訝そうに呟く。
「ちょっと鏡を見たかっただけなんですがうっかり上にあがってしまって。まだこんな時分ですし汚れたままも厳しいので着替えようと思いましてね」
「鏡……うっかり、ですか」
「ええ、つい」
ん、普通の顔や。
懐から鏡を出してそれだけ確認すると、するりと帯を解く。
着替える間も背に視線を感じるのはやはり訝しまれているからなのだろう。
んーこら尻尾掴むん時間かかりそやな。
なんて思いながら素早く帯を締め後ろを振り返る。
すると何故か篠原の視線は未だ俺の身体の方へと注がれていて。
……?
「何か?」
「ああ、山崎殿も伊東殿に負けず劣らず良い尻を……む、いや何でもない。隊務があるのだろう? 構わず行ってくれ」
……ほぼ全部言ってもーてるしな自分んんっ!!
もしかしてさっきの視線はそっちでっか!
すまん! 俺そっちは無理やねん!
「ーーっ、失礼しますっ」
何とか引きつった笑みを残すと俺はそそくさと部屋をあとにする。
同室であることを喜ぶべきか悲しむべきか、悩んでしまったのは仕方ないと思う。


