「あのっ、ですから別にあれはですねっ」
「お? なんだ、前より反応良いじゃねぇか。満更でもねぇ感じか」
「っ、別に……」
「は! んな顔して言われても説得力ねぇっての。ま、一回くれぇなら外泊も見逃してやっからよ、頑張ってくれや」
「しません! ……失礼しますっ」
逃げるように屋根裏へと飛び上がった瞬間、下からは噛み殺すような笑いが聞こえてくる。
ちょっぴし背を押そうとしてくれはったんはわかる。
……大半はからかわれただけかもしれへんけど。
まぁそれであん人の苛々が少しでも軽ぅなったんやったら、それはそれで何よりやとも思う。
……けどっ!
一体どんな顔しとってん俺ぇっ!!
カサカサと妙な体勢で暗闇を駆け抜け、まずは鏡と部屋に向かった。
時刻はまだ昼九つ半(13時)程。加えて己の部屋と言うこともあり、つい勢いのまま部屋に降り立つ、
「うひょうっ!?」
と聞こえた妙な声にこっちが驚く。
だが次の瞬間には一気に気が引き締まった。
「やっ、山崎殿?」
「これは篠原さん、驚かせてしまいすみません」
丁度お前さんの話をしとったんや。
此度の編成で監察にも入れ換えがあった。島田は二番組の伍長を兼任する為部屋からいなくなり、替わりに入ってきたのがこいつ、篠原泰之進。
江戸からの伊東くんの盟友。その存在そのものが目立つ伊東くんとは違い、地味で大人しい老けた印象の男だ。
そか、今日は非番やったな。


