「……昔の人って大変だったんですねぇ…」
髪を洗い終えた夕美がしみじみと呟く。
「そーか? どの辺が?」
「お湯沸かすとこから既に大変そうです。私がいた時代だと水みたいにお湯が出てきたし」
「へぇ、ようわからんけど井戸から湯が湧いとるようなもんか?」
「まぁ……ちょっと違うけどそんな感じです」
違うんかそーなんかどっちやねん。
「てか早よ乾かし。風邪引くで」
何でこいつは話してると手が止まるんや!? そんなんやったらいつまで経っても乾かんわっ。
見てるだけでウズウズするやん!
「貸し、俺が拭いたる」
半ば奪い取るように手拭いを取ると、わしわしパンパンと拭きあげていく。
時は金なり、ちんたらしとったらあかんねん。
「へへっ、有り難うございまーす」
「何で嬉しそうやねん、子供か」
「烝さんよりは子供ですもん」
せやけども。
……なんや、調子取り戻してきたやん。ま、そーこんとな。
そんな夕美に僅かながら安心した俺はテキパキとその髪を乾かしていく。
粗方乾いたところで持ってきた荷の中からおもむろに小さな壺を手に取った。
「特別にこの俺が椿油つけたろ」
「あ、それならわかります! 向こうにもありますよー髪に良いんですよね!」
「せや、ほら前向き」
知ってるものがあって嬉しかったのか、振り返って話す夕美の顔をぐいと前に向ける。
背にかかる夕美の髪は微かに赤みを帯びていて、さらさらと心地良い。
「綺麗な髪やな」
「髪だけはしっかりお手入れしてましたもん、染めたこともないし」
「髪を染めるんか!? てか前向く!」
「あっちじゃ普通ですよー」
へぇー色んな柄とかあるんやろか……何かちょい不気味やな……。


