「チッ、糞っ」
書き損じたのか、副長はくしゃりと紙を丸め畳の上へと投げ捨てる。
……苛々してはるなぁ。
昨日、漸く江戸から戻ってこられたのだが、それからずっとこんな調子だ。
勿論副長宛の書簡が山と溜まっていたからというのも原因の一つであろうが、恐らくそれだけという訳ではない。
「どうぞ」
「ああ」
適度に冷ました湯飲みを置けば、予想通り副長はそれを一気に煽って煙草盆へと手を伸ばした。
「ったく、順を踏んでからだってあれだけ言っといたのによ」
肺へと大きく吸い込んだ紫煙を勢いよく吐き出し、その方は苦々しく眉を寄せる。
それが指すのは間違いなく伊東くんのことであろう。
その賛否については隊内でも意見が分かれていた。
まぁ山南さんがおらんくなって最近は局長もあん人にべったりやもんな。
腕っぷしもあるわ賢いわ、しゃーない気ぃもするけど副長の言うんもわかる。
武田助勤とか明らかに不満そうやもん。そらあとから来たんがひょいと自分飛び越えてったら不満持つ輩も出てくるわな。
ほんでまた悪い人やないさかい逆に取り入ろっちゅう奴等まで出てきとる。
妙な派閥の一丁上がりや。
なーんかヤな流れに傾いとる気ぃすんねんなぁ。
「篠原だ」


