「……風邪ですか?」
ちゅー! なんて内心すっかり鼠になりきっていると、ふと聞こえた咳にスッと医師の顔が出る。
これだけは最早身に付いた条件反射だ。
「いえ、少し喉がむずむずしただけです。それより何で言葉が戻ってるんですかっ」
しかしそれもどうやら杞憂だったらしい。
何てことなく口を尖らせた沖田くんにそっと息を吐く。
「もう門が見えてきましたからね、此処からは助勤と監察方です。それより最近体調を崩す人が多いので気を付けてくださいよ? 甘いものばかり食べてないでちゃんと滋養のあるものも摂ってくださいね、嫌いだからと残さない。助勤が風邪とか下の隊士に示しがつきませんから」
嫌いなやつこっそり隣の永倉くんにあげとるん知っとんねんからな。
「う……わかりましたよぅ。何か山崎さん土方さんみたいになって来ましたからね……」
滔々と捲し立てると目に見えて語尾が弱くなったその人に、俺はにこりと微笑んだ。
「この上ない誉め言葉です」
目指せ副長や。
そんな黒く小さな隊士が屯所へと迎えられて数日。組の職制の編成替えが行われた。
これにより増えた隊士らは十組に分けられ、その頭として助勤が立つ他、各隊に二名ずつ伍長という組頭の補佐役が置かれ、指示の潤滑化が図られた。
しかし何より皆を驚かせたのは、昨年入ったばかりの伊東くんが参謀という副長と同等の役職に置かれたことである。


