近くで見てもか細い猫は微かに頭をもたげ、警戒した様子で俺を睨む。
「今助けたるさかいにちと大人しゅうしとくんやでー」
なんて言ってみても猫が言葉を理解してくれる筈もなく。
そろりと伸ばした手から逃げるようにそれは後退る。
その瞬間、
「「「「あっ」」」」
足を踏み外した子猫はいとも簡単に木の上から滑り落ちた。
「っ」
と同時に俺もまた枝から飛び降りる。
そして宙でその小さな体を掴んでくるりと体勢を整えると、揃って顔を覆っていた子供達の側へと降り立った。
落ちるんちゃうかな思とってんなー猫の癖して間抜けなやっちゃ
「でっ!?」
首根っこを掴む俺の考えが伝わったのか、そいつはあろうことか俺の手を引っ掻くと軽快に跳ねていき。
「あ」
何故か沖田くんの腕にとすっぽり収まった。
……ワレ、なかなかええ性格しとるやないかい。
ついと半目になった俺を他所に、漸く猫に気づいた童達が沖田くんに群がる。
素直に喜ぶその姿を見ていると引きつった頬も緩むというものだ。
そして、それから間もなく子供達は家へと帰っていき、俺達も西日を背負いながら屯所へと向かい始めた。
「それ、ほんまに飼うん?」
それとは勿論、沖田くんの懐からちょこんと顔を出すか細い黒猫のことである。


