俺なんか変な顔、しとる?
「凄く、辛そうに見えます」
クッと眉を潜めた俺の思考を読んだように、山南さんは肩を竦め苦笑する。
そして仏のように柔らかな光を宿した目で俺を見つめた。
「人は、歩みを止めればそこで仕舞いです。それは心も同じ。いつまでも立ち止まっている貴方を、誰が喜びますか」
その言葉に瞠目する。
それが何を指しているのか、聞くまでもなかった。
「ご存知……でしたか」
「すみません、一応総長でしたので。まぁ簡単に、ですけどね」
苦笑いで首を傾げたその人はそのまま向かいの壁に視線をやると、呟くように言った。
「私は明里……彼女には幸せになって欲しいと思っていますよ。既に身請けは済んでいます。そのまま郷里に戻るように言いましたから、そちらで良い人を見つけ、子を産み、女子としての穏やかな幸せを、と」
微かな哀愁を漂わせながらも湛えた笑みは柔らかく、それが今の山南さんの心からの願いなのだと思えた。
愛した女子を残して逝く、最後の願い。
そして俺に言わんとすること。
そのどちらもが、俺の胸を鷲掴む。
……ほんまに、そぉなんやろか。
例えあの抉るよぉな痛みが薄れても、琴尾を想い続けることが俺に出来る最後の愛し方やと思とった。
それが、最後の刻まで俺を想とったあいつへの手向けやと。
だってそやろ、あんな無惨に殺されたあいつを忘れたらあいつが、琴尾があまりに可哀想やんか……。
ついと蘇った記憶に掌を握った俺に、その人は尚も言った。


