それは俺に向かって話しているというより、独り言のような響き。
その言葉が、今回の全てを物語っていた。
まぁ、その気持ちは正直わからんでもないけどな。
確かに近頃の局長は何かにつけて伊東くんやし、移転の話になかなか折れへん山南さんが他の人らからちとうんざり思われてんのも見てわかる。
それに、俺も一度は乱破になる道を捨てて琴尾との『普通』を望んださかいに。
──せやけど。
「此処は新選組で、貴方はその総長です。感情のみで動かれた今回の件はやはり賛同致しかねます」
此処に身を置く限り、己を律すべきやと思う。
立てた己の膝に視線を落とし、否定の言葉を発した俺に、山南さんは一呼吸おいて小さく笑った。
「山崎くん、貴方は賢い。しかし、非常に愚かです」
……愚か?
突然の言葉に思わずその人に顔を向ける。
そこには言葉とは裏腹に侮蔑も嘲りもない、柔和な笑みがあった。
「確かに私は新選組の総長だったのでしょう。けれど、それ以前にまず一人の人間なのです。人が感情を殺して得るものなど何があるのでしょう。心こそ何よりも尊むべきものだと私は思いますよ」
目から鱗、だった。
隊務をこなす上で、此処にいる上で、感情など必要ないと思っていたから。
それに揺られる俺は、甘いのだと思っていたから。
「心が乾くと人生など無意味に等しい。貴方もこの一年で見違える程に空気が変わりました。押し殺すだけが全てではないと、本当は貴方もわかっているのではありませんか」


