拳一つ分程の間隔で仲良く壁に背を預ける。
その人が僅かに体を動かす衣擦れの音までもがすぐ傍で聞こえ、何となく居心地が悪い。
それでもまず口を開くのは俺ではないと、話し掛けられるのを待っていれば、その人は変わらぬ口調でゆっくりと話し始めた。
「聞きましたよ、私の居場所を当てたの、貴方だったんでしょう?」
「……ええ、まぁ」
「まさか貴方が話し合いに加わるとは思ってもみませんでした。昔から賭け事には滅法弱いことをすっかり失念していましたよ」
クスクスと楽しそうに語るその人は、とても死を目の前にしているとは思えない程落ち着いた空気を纏っている。
寧ろ小さなしこりを抱えた俺の方が思いの外緊張していて。
我ながら情けな。
そんな思いでそっと息を吐いた。
「あ、別に責めてはいませんよ? これは賭けだったんです、そして私は賭けに負けた。ならその罰は甘んじて受け入れます」
それをどうとったのか、少し慌てるように訂正すると、その人はゆったりと指を組み、立てた片足にそれを乗せる。
正座か縁側に腰掛けている姿しか記憶にない山南さんの砕けた座り方は少し意外だ。
……今までのこん人はこん人であって、こん人やなかったんかもしれへんな。
本当は知っていた。
この人が人を斬ることに迷いを持っていることに。
局長と副長に半ば強引に総長という役を作らせ、相談役のような形で前線に出なくなったのもそれが理由だと。
「ずっと、考えていました。感情を抑え武士としての誇りだけを守る為に此処にいて良いのかと。そんな時、彼女に出逢ったのです」


