「っ」
ゾクリと毛が逆立つようなその冷たい眼に、沖田くんすらも僅かにたじろいだ。
顎を引いて相手を睨むその目はまるで仁王の瞳。
この人が鬼と呼ばれる所以(ユエン)だ。
「てめぇはいつまでんな生温ぃこと言ってんだ? 俺達はもうあの頃みてぇな田舎侍じゃねぇんだよ、皆でヨチヨチ仲良くやりてぇだけなら今すぐ出てけ。てめぇのその腰にぶら下げてんのは何だ? 飾りか?ちげぇだろ、俺達は命(タマ)張って此処にいんだよ! あいつだってそれくれぇわかって出て行った筈だ、なら俺達はやるべきことをする、それが誠を掲げた武士ってもんじゃねぇのか!」
胸を突くような叫びに、再び場に静寂が満ちた。
確かな信念を以て発せられたその言葉は、副長の覚悟そのもののように思える。
そして総長と副長、二人の関係もまた、見えた気がした。
……なんや、あんな苦手そうにしてはったけど、やっぱし深いとこで繋がってはったんやな。
仏と鬼っちゅう一見正反対にも見えた二人は、表裏一体。相反するよぉに見えてその実、そこにちゃんと信頼はあったんや。
まぁ、確かに聡明なあん人やったら法度を破ったらどうなるかくらい考えへん訳なさそやもんなぁ。
重い沈黙の中、どうやら他の連中も似たようなことを思っているのだろう。
さっきは前のめりに体を傾けていた沖田くんも、きゅっと膝で拳を握り畳を見据えていた。
それは受け入れ難い事実をどうにか受け入れようとしているように見える。
そしてそれは間違いではなかったようで、
「……、私が追います」
その人は真っ直ぐに顔を上げた。


