「……は? 嘘だろ?」
「そんな、何かの間違いじゃないんですか?」
「あの人が法度を破るなんて……なぁ?」
偶然にも真っ先に諸々の事情を知ってしまった俺は、珍しく幹部らの話し合いに陪席(バイセキ)することになった。
予想に違わず、話を聞かされた皆の反応は『まさか』というものだ。
「ちったぁ黙れ」
動揺し、ざわつく空気を断ち切るように副長が鋭い眼差しで口を開く。
特に荒らげた訳でもないその声音は、何故かチリチリと肌を焦がすような響きで部屋中に広がり。
一瞬にして皆が口をつぐんだ。
「フン、いいか、山南さんが逃げた、これは紛れもねぇ事実だ。理由なんて知ったこっちゃねぇ、俺達は新選組として隊規を破った奴を粛清する、それだけだ」
「そんなっ」
腕を組み、事務的に言葉を紡ぐその人に真っ先に反応したのは沖田くんだった。
悲痛に顔を歪ませた沖田くんは奥歯を噛んで副長を見据える。
そして震えた声で言った。
「山南さんは総長で、試衛館から共に汗を流した仲間でしょう? 何故そんなことそう簡単に言えるんですか!」
……沖田くんがこないな顔見せるなんて珍しな。今までも粛清に関わってきてへん訳とちゃうのに。
やっぱりこん人にとって試衛館からの付き合いっちゅうんは格別なんか。
ほんで、それはきっと此処にいてはる人全員の思いなんやろな……。
一番下座に座り、この話し合いをただ傍観するだけになっていた俺は、そんなことを思いながらその成り行きを見守る。
すると副長は少しばかり俯いて、フッと小さく鼻で笑った。
「ふざけんな」


