硬く冷たい感触を背に、ゆっくりと瞼を上げればそこにあるのは白く輝く丸い月。
雲もない澄んだ夜空には星達が煌々と瞬いている。
「はぁ……」
今日もう何度目か分からない溜め息はすぐに空気に溶けていった。
あれから三日。
隊務は滞りなくこなしているものの、胸に漂う靄は濃くなるばかりだ。
……なぁーんで俺がこないもやもやせなならんねん。
別に直接的な言葉を聞いた訳やない、気付かん振りしてしれーっとしといたらええ筈や。
それが、俺達どっちもの為なんやから。
今までどーりあれは妹、俺は兄貴。
それでええねん、それが一番なんや──
「っくしっ! ……ぁーさむ」
あかん、そろそろ本気で寒なってきた。これで風邪引いたら洒落ならんで。
部屋では他の監察連中の高いびきが響くのもあって、静かで落ち着ける屋根へと上がってきたのだが。
考えれば考える程に溜め息は増える。
……今日はもー寝よ。
また一つ、白い吐息を辺りに溶かして身を起こした時、
「ん?」
今にも裏門から出て行こうとしている人影を捉えた。
あれは……山南さん?
提灯だけを手にしたその姿はちょっとそこまで、といった風にも見える。
しかしながらもう月は高くにあり、町はすっかり寝静まっていて。
どこ行かはるんやろ。


