こん前のアレはやっぱり勘違いやったとかか?
それともなんや、恋仲になったっちゅう報告、か?
そんなことを思った途端、忘れていた靄が再び湧き上がる。
……もーさっきから何でモヤモヤすんねん俺。
もしそやったら可愛い弟の喜び事やろ、嬉しいことやん。
そら夕美はいつおらんくなるかもしれん存在やけど……。
せや、そやさかいモヤモヤすんねや。
諸手を挙げて喜ぶにはあれは不確定要素が多過ぎるさかいに。
うん、そうや。
「……なんや、話があるんやろ」
そんなことを考えている間もずっとただ黙りこくっていたそいつに話を促す。
するとキュッと唇を噛んだ林五郎は、何かを堪えるように顔をしかめて俯いた。
なんや? ええ話とちゃうんか……?
その様子に僅かに眉を寄せた瞬間。
「……俺っ、ふっ……振られたしっ!」
それは盛大に声をあげた。
両の手にグッと握り拳を作り、仁王立つ林五郎に些か虚を突かれて一瞬言葉を失う。
……振られた?
「誰にや?」
「あ、阿呆か夕美に決まっとるやろこん呆けお兄っ!」
ぱちぱちと瞬きしながらついと口から溢れ落ちた言葉に、林五郎は顔を歪ませ声を荒らげる。
その顔が赤いのは、西の空に仄かにその色を残すのみの夕日の所為では断じてない。
……、振られた?


