「全く、土方副長は頭がよく回りますね」
西本願寺あとにし、屯所へ向かい通りを西へ歩き始めると、隣を歩く伊東くんがくすりと笑った。
「既に会津藩に根回ししているとは。この示達によって彼方はこの移転話を認めざるを得ないでしょうな」
そう、副長の用意してあった切り札とは会津藩からの示達。
先の抗争で朝敵を匿ったことは幕府も重くみていたようで、会津藩から話を通すとすぐに示達が下りたらしい。
言わばこれは幕命。
向こうが何をどれだけ話し合おうが、結局は移転を受け入れるしかないのだ。
「そうですね、あとは境内にある建物のどこを使わせてもらうかと、時期、それと費用の面をどこまで彼方に負担してもらうかです」
恐らく向こうさんは何かと理由つけて先延ばしにしようとしてくるやろな。
まぁうちも総長が納得せぇへん限りすぐに移転やなんやて出来る訳ちゃうし、そこはまぁかめへん。
場所も広さ的に滅多に使わんちゅう北集会所でほぼ確定や。
問題は金、か。
「問題は移転にかかる費用ですか。ま、我々も無限に財源がある訳ではないからね、そこは申し訳ないが何とか向こうに協力願いたいものです」
俺の思考とほぼ同時。
白い歯を見せ、爽やかに笑いながらそう言ったのは勿論伊東くんだ。
……ふぅん、よぅわかってはるやん。
上京してまだ浅いのにちょっと説明しただけでこっちの情勢もすぐに理解しはる。
確かに局長が気に入るのも頷けるわ。
「あぁ、そうだ山崎く、さん」
でもそこ変テコな間違いせんとって。


