翌日、早速幹部達で屯所移転について話し合いがもたれた。
副長の懸念していた通り、やはり移転場所について山南総長は猛反対したらしい。
殺生を許さぬ境内に我々が入るべきでないと。
けれども副長の仰られた西本願寺を移転先とする理由に、他の誰も異論を唱えることはなく。
ただ総長と副長という大幹部とも言える二人だけが其々の持論をぶつけ、話は平行線のまま取り敢えず局長の『ゆっくり考えよう』というとりなしによって終了したらしい。
しかしながら、先に向こうを落とすという副長の考えから俺は今、伊東くんと共に西本願寺に赴いていた。
「……暫し、こちらでも検討致しますさかいに、今日のところは一先ずお引き取り願えまへんやろか」
法衣に身を包んだ此処の二十世宗主、広如が頬をひきつらせた笑みを浮かべる。
柔らかな物言いだが、はっきりと帰れと言ってるあたり、俺達への感情が読み取れた。
ここで俺達まで不評を買っては少々具合が悪い。
「そうですね、今日は伝えに参らせて頂いただけですのでそろそろお暇させてもらいましょう。前向きなご検討、宜しくお願いします」
そう言って柔らかな笑みを浮かべて頭を下げ、流れるような所作でゆるりと立ち上がったのは──伊東くんだ。
……俺、いらんかったんちゃうやろか……。
外へ出た途端、冷たい風がひゅるりと身も心にも吹き抜けていく。
二人で来たのは良いものの、終始話をしていたのは伊東くん一人。
俺は隣で茶を啜っていただけだった。
前々から話が上手いとは思とったけどホンマ口達者やなぁ……。


