普段から屯所内を歩く時は、足音は断ってあるし気配も極力押さえてある。
それは、こういう時に気付かれ難いからだ。
まぁ別に堂々と出てってもええねんけど……いちお、な。
すっかり身に付いた監察方としての行動に一人言い訳を溢し、ちらりと僅かに顔を覗かせる。
冷えた廊下の奥、仄かに浮かぶのは二人分の後ろ姿。
外からの帰りなのか、明かりの消えた行灯を手にして歩いているのは山南総長。
そしてその後ろを行くのは、これまた副長との会話に名の上がった伊東くんの姿だった。
……へぇ、山南さんが誰かと二人で出かけるんてまた珍しな。飲みにでも行ってはったんやろか。
そーいや二人とも北辰一刀流やったっけ。意外と仲良かったり?
伊東くんも結構本とか読みやるみたいやし、確かに話とか合いそうな感じやな。
それでのうても伊東くんは見目も人当たりもええから、平隊士らにも結構懐かれとるし。
ま、近頃あんま山南さん部屋から出て来ぇへんから、仲ようしてくれてはんねやったらええこっちゃ。
廊下の向こうへと消えて行った二つの穏やかな気配に、ふーっと息を吐き出して歩き出す。
そこに微かに残る白粉の香りに飲みに行っていたと言う想像を確信に変え。
俺はふわりと欠伸を溢した。


