はぁと大きく白い息を吐き出して頭を傾けると首を揉み、その人は再び俺を見た。
「一応西本願寺は話し合いで落とす。ただ山南さんは恐らく使えねぇからな、弁のたつおめぇと伊東に任せることになるだろう。覚悟しとけよ」
『一応』てつくとこがこん人らしいな。
まぁ向こうさんを話し合いの席につかせるだけのもんは用意してくださってはるんや。
俺の役目はそれを使って坊さん連中を頷かせること。
これは屯所の移転が掛かった大仕事や、了承させるより他に選択肢はあらへん。
「お任せください、必ずやそのご期待に答えてみせます故」
うっすらと笑みを浮かべたその人に、俺もまた同じように口許に弧を描かせ見つめ返す。
満足そうにクッと頬を上げた副長に俺は漸く頭を下げ、その部屋をあとにした。
久々に気張っていくでー!
むん、と一人意気込み新たに部屋へと向かう。
火鉢の入った副長室から一歩外へ出ればそこは極寒。新春とは言えまだまだ雪のちらつく日も多い。
まるで氷の上を歩いているかのような感触を足の裏に感じながら、静かな夜の廊下を曲がろうかという時だった。
ん?
ふと感じたのはその先にある二つの人の気配。
ボソボソと小さく聞こえる話し声に、思わず俺は足を止めた。
噂をすれば影が差す、か。


