「あそこは先の蛤御門の戦いの時も長州の奴らを匿った反左幕連中の集まりでしょう? 申し訳ありませんが、それでしたら東本願寺の方が同じ左幕派として何とかなりそうな気がするのですが」
まぁそれでもええ顔はされんやろけどな。
けどお西さんよりはマシや思うねんけど。
それくらいの状況は理解している筈の副長の意図が分からず、確認するように問えば、その人はニヤリと意味深長に口角をあげる。
「相変わらずおめぇは頭が固ぇな。よく考えろ、だからこそ、だ」
だからこそ?
不敵な笑みで俺を見る副長の視線に促され、再び思案する。
攘夷派の頭を持った坊さん処にあえて押しかける利点、か。
味方につけてまお思てはるとか?
……いやいやありえへん。俺らが言うてころっと考え変えるようやったら逆にびっくりするわ。蛤御門の時かて頑なにシラきったらしいしな。
ほななんや?
ちゅうても朝敵である長州の連中匿うような人らやでぇ? 言うたら奴らの隠れ蓑になるよなとこや。んなとこ……。
と、そこまで考えてハッとする。
そや、隠れ蓑や。笠やら袈裟やらで形(ナリ)も誤魔化せるし、寺っちゅう特異な力もある。奴らにとって格好の場所。
そこにもし俺らが入り込めたら……。
「わかったみてぇだな」
そんな俺の考えを読んだように副長は指の先でくるりと煙管を回して片口を上げた。
そうか、そこまで考えて副長は……。
湧き上がる畏敬の念と共に、また一つの疑問が浮かぶ。


