「それは俺も考えてた」
コキコキと首を鳴らしながら振り返ったその人は、眉間に皺を刻んだまま隣にある煙草盆へと手を伸ばす。
そして同じく側にある行灯でさっと火をつけると、脇息に凭れ静かに紫煙を燻らせた。
「江戸じゃあまだ平助が隊士を募ってる、こっちじゃ何もしなくても勝手に集まる。そろそろとは思ってたんだが……場所がな」
くっと更に皺を深くした副長は大きく煙を吸い込む。
やはり行き着くところは同じらしい。
……そやねんなぁ。
この大所帯を受け入れられるよな場所探すんがまず大変や。
上手く見つかったとしても相変わらずうちらの風当たり良ぉないし、向こうさんの首を縦に振らせるんは至難の技や。
せやからてこんままっちゅう訳にもいかへんしなぁ……。
考えても答えの出なかった問題に再び思考を巡らせていると、副長は燃え尽きた煙草の灰を落とし、空の煙管を指先で弄ぶように揺らして言った。
「まぁ、心当たりがない訳でもないんだが」
ゆらゆらと上下するそれを見つめる副長の表情から察するに、色々と問題がある場所らしい。
黙って言葉の先を待っていれば、その節張った手が不意にピタリと固まる。
「西本願寺」
西、本願寺?
……東やのうて?
低く発せられた意外過ぎる言葉に、俺は思わず己の耳を疑った。


