忙しなく日々を過ごしている間に、気が付けば暮れになり年も明けた。
久々に諜報の仕事で遅くなったその日。
俺は唯一明かりの灯った副長室へとその報告を終え、すっかり静まり返った屯所の廊下を気配を消し部屋へと向かっていた。
そしてとある部屋の前に差し掛かろうとしたその時、
「ぐえっ」
「ぐわっ」
「げろっ」
季節外れの蛙が鳴いた。
……またか。
最近夜の度にどこかの部屋で必ずと言って良い程起きるその出来事に細く息を吐く。
今度は助勤らの部屋か……ちゅーか、『げろ』?
「ごるあぁっ! またお前か新八! 俺の逞しい腹を何度足蹴にしたら気が済むんだ!!」
「……殺す」
「わー源さんが吐いてますっ」
あっかーんっ! げろったんは井上さんか!
俺よか四つも歳上やのに、永倉くんみたいなでっかいのんに踏んづけられたら下手したら逝ってまうっちゅーねんっ!
「そこっ、私闘は厳禁っ。井上助勤は大丈夫ですかっ?」
一応夜中なのを考慮し、音を鳴らさないように障子を開けると最小限の音量で確認する。
そこに映ったのは、殺気だった原田くんと斎藤くんに部屋の隅へと追いやられた永倉くん。
そして白目を剥き、魂が半分抜け出ていそうな井上さんを抱え起こす沖田くんに、こんな騒ぎにも高いびきを上げ続けるその他の姿だった。
「山崎いーところに! 助けてくれっ!俺はただ厠に行こうとしただけなんだっ」
「チッ」
「だってこいつが俺の自慢の腹をだなっ」
「黙らっしゃい、助けてじゃなくて謝る。あと自慢かどうかはどーでも良いです」


