危なっ。
危うく可笑しな勘違いされるとこやったわっ!
「まだ何も言ってないじゃないですかぁ……」
「その顔を見ればわかります。……言い方が悪かったですね、色恋事はもう結構なんです」
あくまでさらりと。
しかしながらあえて『もう』という言葉を挟み込んだ。
そうすることで多少なりとも汲み取ってくれると思ったから。
俺の嫁は琴尾一人。
それに、いつ何があるやもしれん此処での暮らしや。特に俺の任務は単独で敵方の懐に入り込むこともある、言わば死と隣り合わせ。
やからこそ大切なもんは要らんねん。
俺と同じ想いはもう、誰にもさせとうないんや。
誰かを好くっちゅう感情は無用の長物。
今の俺には必要ないねん──
何だかんだで人の気持ちを読める沖田くんだ、さっきまでとはうって変わって神妙な面持ちで口をつぐむ。
暫しの沈黙が雪のように俺達の間をはらりと舞って。
再び微かに苦笑いを浮かべた沖田くんがゆっくりと口を開いた。
「まぁ……人と言うのは色々ありますからね。山崎さんがそう仰るのなら私がとやかく言うことはありませんが、最後に一つだけ」
一回り近くも下とは思えぬ、何かを悟ったようなその眼は、柔らかな光を宿して真っ直ぐに俺を射抜く。
「人の想いとはきっとそんな簡単なものではありませんよ。感情があるから私達は人でいられる、無理に押し込めることだけはしないでくださいね」


