両の掌の皮をずるりと剥いた永倉くんの手を井戸水で存分に冷やし、部屋に戻って膏薬を塗り込む。
「巡察は……」
「無理でしょうね、併せて稽古も数日は休んでください」
こんな手ぇして刀なんぞ握れるかい。
「お、怒られっかな……?」
屈強な体を情けなく丸め、おどおどと窺いくるそれは間違いなく副長のこと。
くるりと布を巻き終えると、ポンッと両手で彼のそれを挟んでやった。
「ーーっくううぅぅっ!!?」
「仕方ないでしょう? 自業自得です。男なら潔く怒られてきなさい」
池田屋ん時なんて親指千切れそーになっても刀振り回しとった癖に、なーにが『怒られっかな?』やねん。
気にするとこ間違うとるわ。
痛さに悶える永倉くんににこりと微笑み立ち上がる。
「さぁ手当ても済んだことですし、さっさと叱られに行って下さい。邪魔です」
「うぅ山崎何か土方さんの鬼がうつってきてんぞ……」
「祟られてるみたいに言わないで下さい。折角人が非番返上で炊事番を変わってやろうと思っているのに。こんなに優しい鬼はいませんよ」
しょぼんと項垂れるその怯え具合に小さく鼻で笑って部屋をあとにすると、俺は再び勝手場へと向かった。
「うおー! お前なら来てくれると思ってたぜ山崎ぃー!!」
なんて、包丁を持ったまま飛びかかってきた原田くんの顔につい一発かましてしまったのは言うまでもない。


