「ですが」
「ああ、気にしないで下さい。近くまた新しい本を買う予定なのでそろそろ整理しようと思っていたところだったんですよ。これ以上増えると流石に寝る場もなくなりますからね」
む。……せやったらまぁ……可笑しないか。
なんて納得する半面、なんとなーく胸の奥に何かが引っ掛かる。
柔らかく穏やかなその笑顔の裏に潜む胡散臭さが少々増している気がするから。
……なんやろ、普通に見えるけどやっぱり何かちと変な気ぃするわ。
この人が妙なことしやるとは思えんけど……まぁちょい気にしとくに越したことあらへんか。
どこか相手を拒んでいるかのような色を浮かべたその眼に表だっての詮索は無意味。
「ではお言葉に甘えて頂戴致します」
此処は引くべきと判断した俺は素直に腰を折った。
「いえいえ。あ、代わりと言ってはなんですが一つ伝言をお願いしても良いですか?」
「ええ勿論」
「今日の炊事番の方に私の分は要らないと言っておいて下さい。少し出るので」
そーいや最近たまに夕餉ん時いてはらへんな。馴染みの敵娼(アイカタ・遊女)さんでも出来たんやろか。
や、相手が女とも限らへんな……。
て、あかん、最近どーしても色々勘ぐってまうわ! 職業病やっ。この俺にすんなり話すってことはやましいことなんてないわな。
……まぁ一応副長の耳にも入れとくか。
「わかりました、お気をつけて」


