長屋と長屋に挟まれた細い脇道へ足を踏み入れれば途端に空気が冷たくなる。
そこを更に曲がった所から声が聞こえてきた。
「だから違いますってばっ!」
「嘘つけ、随分仲良さそうにしてやがったじゃねぇか。俺達は見てたんだ、お前があの沖田といちゃついてるとこをよ」
夕美と、男が二人。
さっきのあれを見とったんか。沖田くんともなると色々顔が知れとるからな。
気付かれぬようそっと男二人を確認すれば、腰には一振りの打刀が下げられている。
どこの脱藩浪士かなんや知らんけどな、んなとこでこそこそ女狙とる時点で人として下の下や、下の下。
そんな男達に、ふつり、内に冷たいものが湧く。
スッと目が据わるのを自覚しながら、俺は袖の中に仕込んでいた飛び苦無を掌へと滑らせた。
大した腕でないのは気配でわかる。
けど下手に動いても夕美があれやしな……取り敢えず夕美から離れとる奴から片付けるか。
そう狙いを定めると構えたそれを男の手脚へ投げ放ち、間髪入れず屋根へと上がった。
「ぐっ!?」
「どうし……誰だっ?」
呻き声を漏らしうずくまったそいつに、夕美の腕を握っていた男が辺りを見回しながら夕美の身体を引き寄せる。
それが刀に手を掛けるその前に素早く後ろへと降り立つと、俺は男の首へピタリ苦無をあてがった。
「この娘の言うたんは嘘やないで、これは俺の連れや。早よう手ぇ放してもらおか」


