「そうですねー今ので最後です」
や、今生の別れやあれへんねんから女子の清算していかんでもええと思うで。
だって江戸に隊士募りに行くだけやん? そらちいとばかし長い旅になるかもしれんけどや……。
「僕待たせるの嫌いなんですよねーだって帰ってこないかもしれないでしょ? 待たせるのも……待つのも、本当、馬鹿らしい」
俺の疑問を読み取ったのか、前を見据えて吐かれた言葉は、どこか空虚で物悲しい響きを纏っている。
そこにいつもの黒さは微塵もなく、捨てられた仔犬のような寂しげな横顔に、本来の藤堂くんが見えたような気がした。
やっぱりあの話はほんまなんか……もしかせんでも自分の母親を重ねとるんやろなぁ。
そう思えば彼の二面性も頷ける。
嫌われんように、捨てられんように、か。
「……山崎さん、何するんですか」
「え?」
じとりと睨むように振り返った彼の言葉に、いつの間にかその頭を撫でている己に気付く。
「あ、や、あの、すみません、ついっ」
何やっとんねん俺の手ぇーっ! あかん! 癖や! しょげてやるん見たらひょいっとやってもーた!
仮にも上役やっちゅーのに! こん人子供扱いされるんいっちゃん嫌がんのにぃっ!
ぶーっと不満そうに口を尖らせる藤堂くんに内心たじたじしていると、その人は意外にもくるりと前を向いた。
「総司が貴方に構う理由が何となくわかった気がするから今のは特別に見逃してあげます」


