爽やかな秋風が稲穂を揺らす心地良い音色を聞きながら辿り着いた屯所の近く。
珍しく見知らぬ気配があるなと思っていれば、門前に見えるは藤堂くんと町娘らしき女子の姿で。
困ったことに何をどう考えても睦まじい雰囲気ではない。
うん、あっこは通りたないな。しゃあない、裏から入ろ。
ちゅうかこん前の娘ぉとちゃうやん。かいらし顔してよぉやりやるわ……。
なんて溜め息を吐いて踵を返した。
「あ、山崎さーんっ」
と同時に背に声が届く。
ちょっ!? 痴話喧嘩に俺を巻き込まんとって!
振り返りたくない気持ち一杯で立ち止まれば、軽快な足音が近づいてくるのがわかる。
仕方なくゆるゆると顔だけを動かした瞬間、それは勢いよく首に飛びかかってきた。
「良いところにっ。さー行きましょー」
「って、彼方の女子は?」
「良いんです良いんです、どうせ明日から暫く江戸に行くんだしそのうち忘れますよー」
首に巻き付いた右腕でに引っ張られるようにして強引に歩かされる。
残された女子は少々可哀想ではあるが、俺がとやかく口を出すことでもないから。
「……出立のご準備はもうお済みですか?」
嘆息混じりにその話に乗っかることにした。
するとするりと腕をほどいた藤堂くんは、伸びをしながら極上の笑みを浮かべた。


