……、夕美?
これまた意外なところで出てきたその名に僅かに心の臓が跳ねる。
何、動揺しとんねん俺。
うん、出てきたんが意外過ぎてちとびっくりしただけや。
えと、もしかしてたまに俺らがおうとるん聞いて妙な勘違いしとったんか?
そう考えれば今までの態度もさっきの質問も合点がいく。
なんや、そっか、そーゆーことか。
うんうんと頷きたくなる気持ちを心に押し留め、俺はその揺れる双眸を見つめ返した。
「あれは成り行き上俺が面倒みとるだけで、別になんもあらへんで?」
そら夕美の事情を知っとるんは俺だけやから拠り所でありたいとは思うし、あれも頼ってはきやるけど、それだけや。
それに、
「あいつも俺んことはおとんやら兄ぃみたいや言うてたし、そーゆうんは絶対あらへんわ」
夕美にとっちゃ俺『おじさん』な歳らしーしなっ。
……くすん。
ちょっぴり懐かしい記憶を思い出し、乾いた笑みで遠い目をしていた時だ。
「やっぱり、お兄は阿呆や」
林五郎から低い声音が発せられた。
「お姉も……も、んな野暮天あんぽんたんのなにがええねんっ! っくうー!!」
そして叫んだ勢いのまま立ち上がると捻った足を抱えて飛び跳ね。
「お兄の阿呆ー!」
痛さに目を潤ませつつもそう叫んで、ぴょこぴょこと片足跳びで部屋から走り去っていった。
開け放たれた障子の向こうから入ってきた涼やかな風が、ひゅるりと俺の頬を撫でる。
「……なんやねんな……」


