不満げに口許を結ぶ林五郎を誰もいない監察方の部屋へと引っ張ってきて暫く。
腫れた足首に膏薬を塗り込みながら、久々に面と向かったそいつに話しかけた。
「どしてん」
「……別に」
手元を見ながらでもむくれてるとわかるぶっきらぼうな声に、俺はわざとらしく溜め息を吐く。
「別にやあらへん、これはどないしたんやって聞いたんや。これは隊医としての質問や、巡察中に何があってん?」
これはあながち嘘ではないが、口をきかせる口実でもある。
折角こーして二人になったんや、そろそろその拗ねとる理由を聞かせてもらうで。
「ほらほら早よう」
「つっ、た!!」
薬を覆うように襷を巻き、ぽんっと上から軽く叩くと口を尖らせていた林五郎は漸く反応を見せた。
諦めたように畳に視線を落としてぼそぼそと呟く。
「……食い逃げをお奉行さん連れてく途中、そいつが突然逃げよぅして、ぶつかって、転けた」
うわ……そらまたどっちも間抜けやな。
そんな場面を想像しただけで溜め息が溢れる。
「気ぃ抜けとる証拠や。隊務中は何が起きても対処出来るようしっかしとってもらわんと困る。今日はこんくらいで済んだからええけど相手によっちゃお前、今頃死んどるで? なんの為に此処に来たかよう考え」
少々きつい物言いかもしれないが本当の事。
大切な義弟やからこそ、はっきり言わせてもらうんや。
真っ直ぐに林五郎を見据えていれば、そいつは眉を寄せ、ぐっと唇を噛んだ。


