暑さ寒さも彼岸まで、
なんて言葉の通り、あれから数日が経つと日中もかなり過ごしやすくなった。
先月起きた抗争によって尊皇攘夷を掲げる過激派連中は再び鳴りを潜め、俺達諸士調役が町で諜報活動をする機会は激減。
現在は屯所内での監察任務にあたることが殆どだ。
とはいえ流石に全員で行う仕事でもない。
故に俺以外の監察方は一般隊士らと共に市中巡察にあたることもしばしばだった。
俺はと言えば、局長がお上と政論を交わすのに同行したり、屋根裏に潜んでみたり、体調を崩した隊士の体を見たり。
そんな毎日である。
……、ん?
庭に揺れる鮮やかな彼岸花を視界の隅に捉え、縁側を歩き進んでいれば何やら門の方が騒がしい。
思わず振り返って確認すると、馴染みのある声が近づいて来くる。
またどないしてん……?
なんてその登場を待っていれば庭を回ってきた声の元が建物の陰から顔を出した。
涼やかな目許をした斎藤くんが僅かにもがく林五郎を真顔で肩に担いでいる。
些か面妖だ。
「丁度良かった、怪我人です。どうやら足を痛めたようなのですが」
「だーかーらー大丈夫ですってば!」
草を掻き分け俺の側までやってきたその人が、林五郎の足を軽く持ち上げる。
見れば確かに足首が赤く腫れていて、軽く動かすとそいつは短い呻き声を漏らした。
……ふむ。
「捻っただけのようですね。一応膏薬でも塗っておきましょう」
「ちょ、いい……っ!」
「宜しくお願いします。では私は巡察の報告があるので」
「お疲れ様です。わざわざ有り難うございました」
首根っこを引っ付かんで林五郎を剥がすと、斎藤くんはぺこりと一礼してそのまま何事もなかったように去っていく。
涼やかな風が吹く縁側に、俺たちだけが残った。


