ぷぅっとタコ口になった夕美はそのままじとりと睨み上げてくる。
「……ずる」
「へっ?」
な、何が狡いんっ!?
その眼に何故かドキリとして、思わず手を離した。
「もーそれでいいです、綺麗だし可愛いし良い匂いだし。それに私にって選んでくれたのが……一番だから」
すると胸の前できゅっと匂袋を握ったそいつが、俯きながら語尾を弱めて呟いて。
……あれ? なんかそれどっかで聞いた台詞……、あ。
目をしばたたかせつつも素早く記憶を手繰り寄せれば、ふっと浮かんだのは今日のこと。
そーいや藤堂くんといちゃついてやった女子が似たよなこと言うとったっけ、その気持ちが嬉しいて……。
うん、他意はない、よな。
誰かて贈り物は嬉しいもんな!
別にそーゆーアレやなくても……。
「実は今日の烝さんは珍しく良い匂いがするなーって思ってたんですよ! これ、持ってたからだったんですね」
何となく漂った静寂を破り、夕美が顔をあげる。
そこにあるのはいつもの笑顔。
少々固い気もするそれに、俺も乗っかることにした。
「なんや普段俺が臭いみたいに言わんとって」
「ち、違いますよっ! 烝さんっていつも全然匂いがしないから意外だなって思っただけで!」
途端に慌てるそいつに、漸くいつもの空気が戻ってきた気がする。
「まーな、仕事柄気配や人物を特定されんよう匂いのするもんは持たんようにしとるからな。風呂にも毎日入りにくし」
「え!? 毎日じゃない人もいるんですか!?」
「そらおるで、ものぐさな奴はすいー臭いしてやるわ」
「ひぃぃーそんなの絶対無理無理っ!」
「せやろ? 俺も正直近寄りとぅないねんー」
うん、こいつに限ってそれは、ない。


