しかも毎晩通うて! そん人其れ者(芸妓や遊女)やったんかい。あんさんえらい羽振りがよろしいなぁ!
土方さんかてそないぱあっとはいかはらへんで!
こらどこぞの藩主の落とし胤(ダネ)やっちゅー噂もあながち嘘やなさそやな。
佩刀(ハイトウ)も闇にええもん下げとるもんなぁ。
有無を言わさず全体が目に入る狭い店内、横目でちらりと見やれば一見可愛いらしい二人が睦み合っている。
……ん、店変えよ。
「あー涼しー」
幾分涼しくなってきた夜風に吹かれ、夕美がその長い髪を揺らす。
闇に染まった空には星が瞬き、弓張りの月が眼下に広がる長屋の瓦屋根を柔らかく照らしていた。
静かに響く虫の音が心地良い。
「朝晩は大分涼しくなってきましたねー」
なんて足を泳がせ目を細める夕美の言う通り、日のある日中を除けば町はすっかり秋の装いだ。
前回も来た此処は、川端三条にある法林寺の本堂上。
何故か『次も此処で』と約束させられ、今日も夕美を連れてやって来たのだが。
「せやけどあんま夜出歩いたら明日の仕事しんどないか?」
「大丈夫ですよー向こうにいた頃はもっと遅くまで起きてたりしてましたもん。……あ」
顔にかかる髪を耳にかけ、元気にこっちを向いた夕美が何故かすぐにおどおどと眉を下げた。
「烝さんが大変ですよね」
意外なところで己に返ってきたその言葉に虚を突かれつつも、胸に温かいものが広がる。
いつものようにその頭を撫でると、俺はにっと口角を上げた。
「俺こそ心配いらん、会いたい言うたん俺やねんから」


