ちょっ! あかんあかん!! だってそれ俺! 俺やもんっ!!


「そりゃ花街の女子も綺麗ですよ? ですけどね、私を心から心配して健気に介抱してくださったあの女子の方が輝いて見えたんです!」


ひーなんやちぃっとばかしええように色付けされとらへんか!?


俺そない優しい感じやあらへんかったやろ!?


「『ゆっくり飲んでくださいね』と微笑みながら水を飲ませてくれた時、私は心を奪われました……」


微笑んでへん微笑んでへん!


それあれや! 朦朧としとった頭がなんか色々勘違いしただけやっ!!


うっとりと妄想する沖田くんから目を逸らし、頬をひきつらせていれば、その節くれだった長い指が俺の肩をがしりと掴んだ。


「山崎さんも以前此方で町医をしていたと聞きました! あの辺りで年頃の娘さんのいる町医者をご存知ではありませんか?」


その真剣さに思わず目を白黒させる。


え……なんか今更『あーあれ実は俺やねん。別嬪さんやったやろーうふ』とか言えん雰囲気なんやけど。


「他の人に話したら絶対からかわれるし……山崎さんを男と見込んで話したんです」


うわーそれ殺し文句やん……。


えっと、こらあれやな、下手にほんまのこと話して傷付けるより去り気なーく無理やでーって言うた方がええよな。


そう結論付けた俺はあえて困ったように苦笑を浮かべて首を傾げた。


「そうですね、娘さんがいらっしゃる方も知ってはいますが、残念ながら皆良人(夫)のある身で」

「あ……そう、ですよね……」


するとその整った顔には憂愁の影が差して。


なんか……ほんますんまへん!