なぁ琴尾、お前やったらそうせぇ言うやろ?
いっつもうちに来た人らの元気になった顔が見たい言うてたもんな。
俺は、もう迷わへんよ。
お前の心を思い出させてくれたあのお方の為にも俺、精一杯頑張るわ。
新選組隊士として、乱破として、おとんとおかんの息子として。恥ずかしゅうないよう生きてみせるさかいに……。
「……あま」
「? 何が甘いん??」
ちょこでも食うた?……な訳ないな。
頭の中で呆けて突っ込んでいる声が聞こえたのか、半目になった夕美は微妙に片頬を膨らしてみせる。
「や、もういいです。どーせ言っても無駄なんで。それになんか今は……」
そして拗ねたようにぷいっと視線を逸らすと、尻切れに声を小さくして俯いた。
その様子に何となく、焦る。
え、俺またなんか変やった? や、可笑しなことは言うてへんつもりなんやけど……てか言うてへんよな!? 無駄って何?
あまって甘いとちゃうんかいな? ほなどーゆー意味なんやろか……?
「えと、」
「ーーっ、あーもういいですっ! ヘコんでてもしょうがないしっ」
へ、ヘコんだって何がっ!?
突然がばりと顔を上げたそいつに思わず目をしばたたかせる。
「今はこのままでいいです。私もどうしたいか……よくわかんないし」
お、俺もっとわからんねんけど……。
「だから烝さん!」
「は、はい?」
「これからもよろしくお願いしますね!」
……それ、微妙にふんぞり返って言うことちゃうような気ぃすんねやけど。
まぁ……ええけどな。
醜くて、弱くて、情けない俺を知っても尚、こいつは俺を俺として見てくれる。
それが嬉しくて。俺は内に広がる温かさに目を細めた。
「ほな俺も、改めましてよろしゅうに」
こいつをあの場所で拾たんも、なんかの縁やったんかもしれへんなぁ。