真ん丸とした夕美の瞳が無言で俺を捉えた。
その手は俺に叩かれた頭にそろそろと触れる。
そして静かに瞼が閉じられて
ゆっくりと、開いた。
「……やっぱり……烝、さん?」
……あ。
いやん、俺お柚ちゃんのまんまぁっ!
「や! 人違いです、ほな失礼っ」
こうなりゃ逃げるが
「だってさっきのポンも一緒だしっ! もしかして烝さんやっぱり変な趣味が!?」
「んな訳あるかいっ! 仕事や仕事っ!」
「ほらやっぱり烝さんじゃないですかっ!」
「あ」
勝たれへんかったぁっ!!
哀しいかな。さささと逃げようとした俺の袖を掴んでかけられたその言葉に突っ込んだのは最早条件反射だ。
「……」
「……」
己の喉を唾が通る音がごくりといやに大きく聞こえる。
無言で絡まる夕美の視線は、怒りのようなそうでないような。
色々な何かがない交ぜになったような、そんな目。
袖を掴むその手には逃がさんとする確かな意思が感じられる。
逃げられ……へんよな。
なんや変なとこで気ぃ強いねんから。まるで……。
鋭い意思を持ったその瞳に俺は深い溜め息を吐き、わしわしと頭を掻いた。
「……しゃーないな、話す! 話すから……明日まで待ってや」
「何で」
「今日はまだ仕事が残っとる、すぐ戻らなあかんねや。明日仕事が終わったら店行くさかい……五つ半(10時過ぎ)、抜けられるか?」
言葉を遮り、少々強引に約束を取り付ける。
すると、
「絶対、ですよ?」
夕美は瞳を揺らしながらも、ぐっと唇を噛んで了承し。
「ん、絶対や」
つい苦笑いになった俺はその頭をくしゃりと撫でた。
「てゆーかその裾下ろしてください。お腰丸見えだし。なんかこっちが恥ずかしいです……」
「あ、すまん」


