これは……っ、
突如、表の戸が開け放たれた音と共に猛々しい声が響き渡る。
それは、俺が今か今かと待っていたもの。
近藤局長の声や!
「へぇ、只今……」
「御用改めである! 主が此処の主人か」
「ひっ!? し、新選組や!」
「おい待て!? っ、総司来い二階だ! 二人は此処で退路を塞げ!」
「「「承知!」」」
土間の脇にある勝手場にいた俺達女子衆(オナゴシ)の前を、慌て転がるように主人が奥の階段へと駆けていき、そのすぐ後を浅葱の羽織が舞う。
瞬間、
──ガシャン
行灯が蹴倒され、明かりが消えた。
「御用改めである! 無礼すまいぞ! 手向かい致すは容赦なく斬り捨てる!」
「「きゃああぁぁっ!!」」
階段の上から局長の怒号が聞こえ。闇に包まれた土間で、状況を理解した女中二人の悲鳴が響く。
この子らは逃がさんとっ。
「永倉助勤っ、一階はただの旅客や! 女子衆も関係ない! 自分ら早よこっから出ぇ!」
「へ? お、おうっ!」
永倉くんに状況を伝え、女子衆に逃げを促し。
「こっちや!」
唯一置いてけぼりで固まる夕美の手を引き表口へと走った。
外に出ると、既に周りの長屋からはひそひそとした好奇の目線が此方に向いている。
未だに瞠目したままの夕美の肩を掴み、俺を見る丸い双眸に自ら視線を絡めた。
「此処は危険や、早よ自分の店戻り。えぇな? すぐ逃げるんやで」
「……ぁ、お柚さ……!」
ただそれだけを伝え、ぽん、と頭を叩くと俺は身を翻し四国屋へと走り出した。


