気が付けば声が漏れないようにする為か窓は閉められ、部屋は男達の熱気でかなり蒸していた。
善を運んだり、皿を洗ったり、こっそり酒を追加してみたり。
時折やってくる連中の給仕をしながらも、密かに他の部屋の様子を探る。
一階はどうやら普通の旅客が入っているらしいが、二階は奴等の貸し切りになっているようで、他は全て空き部屋だ。
逃げ場が限られる分、少数で討ち入るには都合が良い。
よっしゃいける……!
そうしているうちにももう半刻以上経ったように思う。
なのに。
……なんでや、なんで来ぇへんねん。
いつまで経っても局長達が現れない。
もしかしてなんか不都合でもあったんやろか……。
なんて、もどかしさに盥で皿を洗う手に我知らず力が籠っていれば、隣に見知った気配がしゃがみこんだ。
「手伝います」
「あ、ええよ、他の」
「今はもう何もないみたいなんで」
然り気無く遠ざけようとするも呆気なく撃沈。
仕方なく夕美と二人で皿を洗っているのだが。
…………なんや、なんでこいつずっとチラチラ見てくんねん!?
まさか俺やて気付いてへん、よな?
今日は町娘やから薄化粧やし……や、俺の変装が見破られる訳……。
でも、もし、もしやで? 気付かれとったら俺、ただの変態ちゃうん!?
や! やっぱりないない……。
「……あの」
「はいなっ!?」


