ひょっこりと顔を出したその声の持ち主とぴたり目が合う。
途端にぱっと屈託のない見慣れた笑みが溢された。
「あ、藤田屋の女将から何かあれば手伝っといでって言われてきたんですけど。これ紹介状です!」
それどっかで聞いた台詞ぅ!
や、ちょー待って! あかんて! なんしかあかんてぇっ! 何でまた自分が来んねん!
「あれ? また藤田屋さんとっから?」
固まる俺の後ろで奥から来た女将が顔を覗かせる。
「はいっ、夕美と言いますっ! やっと手が空いたので……って、また?」
ひぃーややこいややこいっ!
あかん! 固まっとる場合やないで俺!
ほけっと首を傾げた夕美に、俺は慌てて笑みを作った。
「ややわぁー藤田屋の女将さんたらうちもおることこの子に言うてはらへんかってんなぁ。人手が足りひんからって山崎さんから女将に紹介されたんよ、あんたもせやろ?」
「すっ、烝さんの!?」
此処の女将に怪しまれぬよう、あえて共通点である俺の名を出す。
すると何故か夕美はどこか不安そうな表情を浮かべて。
……?
と小さな疑問が頭に浮かんだ時。
「おい、邪魔だ」
また別の男達が木戸を鳴らして入ってきた。
「す、すみませんっ」
「いらせられませ、うちの若いもんが失礼しました。さぁさ、お二階へどうぞ。……お柚、その子にも手伝いしてもろて」
ピリピリした空気を纏った男達に夕美が飛び退くと、女将はそんな言葉を残して奥にある裏階段へとにこやかに案内していく。
静かになった土間で、ちらと横を見ればこれまたばっちりと目が合って。
「あの、宜しくお願いします」
ぺこりと頭を下げた夕美に俺は静かに微笑んだ。
「……うちこそ、よろしゅう」
間ぁ悪すぎやろ……!!


