今いる人数分より多めの酒を部屋に置くと、さっきの栄太郎とか言う野郎にじろりと睨まれた、が。
「そう何度もお邪魔させてもらう訳にもいきませんさかいに」
そううふふと笑みを残して出てきてやった。
ふんっ、京女を舐めんなやっ。
なんて片頬を膨らませ階段を降りると、丁度また誰かがやって来たところらしく、行灯を手にした主人を先頭に数人の男が目に入る。
「いらせられませ」
頭を下げ脇へ避けつつも、仄かに照らされたその顔をちらりと盗み見て。
密かに息を飲んだ。
……宮部、鼎蔵……!
口許を不機嫌に結び、鋭く前を見据える僅かに窪んだ目は確かな重圧を感じさせる。
明らかに苛々したその様子は、恐らく今朝の古高の件が原因なのだろう。
決まりや、間違いない。当たりはこっちや……!
男達が階段を上がっていく音を聞きながら、ゆっくりと息を吸い込む。
そろそろ六つ半(八時過ぎ)か……会所を出る頃合いやな。
こっちに来るんは少ないけど局長に沖田くん、藤堂くん、永倉くんを含めた精鋭揃いや。
こっからやと四国屋もそう遠ない。
討ち入りが始まってすぐ副長に知らせに走ればいけるか……。
無意識に盆を抱き締め、勝手場に向かっていた時、
「すみませーん、遅くなりましたー」
どこかで聞いたことがある声が戸口から発せられた。
……はい?


