「お柚ちゃんやね、ほな此処で夕餉の仕度手つどおてもらえる?」
皆ちょっとええかと手を叩いて俺を紹介する女将は疑う素振りすらない。
柔らかな笑みを作ると俺はぺこりと頭を下げた。
「柚季です。今日はよろしゅう頼んます──」
袖に襷をかけ、何事もなく女中業に励んで一刻半程が経ち。
……可笑しいな。
さっき感じた妙な引っ掛かりは嫌なざわつきとなってその首をもたげ始めていた。
ぽつりぽつりと来る客は皆浪士の風体。しかもその全てを主人自ら案内して二階へと上がっていく。
こらもしかしてこっちが当たりとちゃうんか……。
「お柚ちゃんこれお二階運んでー」
「はぁい」
一人そんなことを考えていれば上手い具合に渡された善に、可愛く返事を返す。
っしゃー、とりあえず上の様子を探ってみるか。
そんな心の声はおくびにも出さず、俺はにこやかに狭い階段を上がっていった。
「失礼します、お食事お持ちしました」
静やかに襖を開け中へ入ると、そこは中仕切りの襖が取り除かれ、がらんとした広間のようになっている。
怪しさぷんぷん。
部屋に居るのは見覚えのない浪士が六人。まだ若そうな彼らの顔が一気に此方を向いた。
俺はたおやかに艶やかに、微笑を浮かべて小首を傾げる。
「どちらに置かせてもらいましょ?」
こっからはちぃと本気でいかせてもらうで。


