桝屋喜右衛門こと古高俊太郎の手当てを終え、戻った俺に告げられたのはとても正気の沙汰とは思えぬ内容だった。
思わず聞き返してしまった俺に、副長は不敵な笑みで続ける。
「ああ、風の強い日を狙って火を放ち、その騒ぎに乗じて天子様を長州へお連れする、それが奴らの狙いだ」
……狂っとる。そんなことしたらあっちゅう間に京は火の海や。
どんなけの人間が死ぬ思てんねん!
沸々と湧く怒りに己の目が据わるのを自覚していれば、口許を緩めたままの副長は更に笑みを深めた。
「で、だ。その為の得物を一手に集めていた古高が俺達に捕らえられたとなりゃ奴らは慌てて頭を抱える筈だ。どうすりゃいい?、とない頭を寄せ集めるだろうよ、すぐにな」
……そうか、丁度祇園祭が始まっとる今やったら人混みに紛れて集まれる。
俺がそのことに気が付いたのを理解したように、副長はくっと口角を上げた。
「隊を二つに分けて改める。取り敢えずこっからじゃ動きづれぇからな、一度祇園の会所に向かう。極力感づかれねぇようにバラけて出るよう各助勤に指示は出してある」
俺が古高を看てた間にそこまで……流石副長や。
再度その凄さに心を震わせていると副長は、だが、と僅かに苦笑いを溢される。
「如何せん人手が足りねぇ。あくまで本命は四国屋、俺はそっちに向かう。長州藩邸の裏にある池田屋でやるとは思えねぇがよ、お前は念の為そっちに潜り込んでくれ」
──潜り込む
それが意味するのは一つや。
「承知致しました」


