「……絶対、ですよ?」
暫し不機嫌に頬を膨らまし、腕を組んでいた夕美が渋々ながらもそう呟いて。
「ん、約束や」
俺はその頭をくしゃりと撫でた。
「絶対に絶対ですよっ?」
「絶対に絶対や。なんならあれもつけたろっ」
石ころや思い思いに生える雑草に足を取られぬよう、夕美の手を引き表へと回る。
その間にも念を押してくるそいつへ、詫びにと一つ付け加えた。
「ほら前に買うた匂袋、もう匂いとんでもーてるやろ? この前とかずぶ濡れなったし。また今度買いにこや」
「えっ!」
ぱあっと顔を明るくした夕美に少しだけ胸を撫で下ろした直後。
あ!、と声をあげたそいつに思わずどきりとする。
「あのっ、じゃあそれ、烝さんが選んだやつが良いです!」
続いて発せられたのは不思議な願い。
「? 別にえーけど……自分で選ばんでええん?」
「烝さんが選んだのが良いんですっ」
前はあんなけうろうろして決めとったのに、俺なんかが選んだんでええんやろか。
しかしながら、何やら期待の籠った目で見つめられると頷くしかない。
「ん、わかった。約束な」
「わーいっ! 有り難うございますっ」
単純なやっちゃ。
すっかり機嫌を直したらしいそいつにほっと笑みを溢し、俺達も来た道を再び歩き出す。
夕美の相手をしながらも密かに報告しなければならないことを整理していれば、ふとさっきの感情が過った。
そーいや正体明かさなて思た時何で俺……。
先を知るんが怖かった?
怯えられるかもしれんから?
……や、もしかしたらただの『山崎烝』でいられる場を失うんがちょっとだけ……怖かったんかもしれんな。


