休憩を終え腹も膨れ。
眼下に広がる景色を説明しながら山を下りていく。
すると途中木立の合間に、厳かに佇む古びた小さな建物が現れた。
「これ何ですか?」
「これは廟や。織田信長っちゅう昔の武将の御霊を祭ってあんねん」
「信長! 信長は知ってますよ! 超有名ですもん!」
「ほー?」
やっぱりある程度の学はあるんやなぁ。
……これの知識の中に、俺達の軌跡はあったりするんやろか。
『新選組って知っとるか?』って聞いたら、どーゆー答えが帰ってくんねやろか。
……まぁ、ええな。
知っとったって歴史に詳しゅうないて言うからには大した情報もないやろ。
それに、先のことを知ったかて今がおもんなくなるだけや。
今を生きる、俺にはそれだけしか出来んのやから。
へーほーと廟の中を覗こうとしている夕美を見つめ、そんなことを考えていれば、ふと微かに人の気配が近付いて来ることに気が付く。
それに違和を覚えたのは、直感だ。
道を上がってくる気配は二人。
話し声もなく、どこか張り詰めた空気のように思う。
そして土を踏む音と共に小さく聞こえてくるのは、腰に下げた大小が擦れる音。
一人は浪士、か? こんな何もない所に何の用や……?
ちぃっとばかし見学させてもらおか。
「夕美、こっちや」
「へ?」
極力小声で物音を立てないようにしながら、夕美を連れて廟の裏へと回る。
状況を飲み込めていない夕美の口を塞ぎ、静かに囁いた。
「すまん、話はあとや。今はちと大人しゅうしとってくれ」


