振り返ればそこに立つ女は始めに見た見慣れぬ着物姿。
改めてその姿を目の前にしてもやはり珍妙で。到底この土地の者とは思えない。
「あのっ、遅くなりましたが私佐藤夕美(ユミ)って言います。今日は色々と有り難うございました!」
短い裾をはためかせ、女はぺこりと頭を下げた。
まぁ……悪い奴ではなさそうやねんけどな。
「夕美か。さっきも言うたけど気にせんでええ。でもこれからは周りよう見て気ぃつけるんやで?」
ぽんぽんと頭を叩いてやれば夕美はわかりやすく拗ねて口を尖らせる。
ぷ、やっぱ餓鬼やな……、
「子供扱いしないでくださいっ。これでも私、今年で十八なんですからっ」
……十四、五か思てた。
「ま、お兄さんからすればまだまだ子供や。さーほな行こか」
ここはまた明日にでも片しに来たらええやろ。
夕美を促し、立て付けの悪い木戸を僅かに引けば、ひゅっと冷たい風がその隙間から勢い良く吹き込んできた。
「寒ぅー! てか何処まで送ってけばええねん?」
ついさっきまで鮮やかな茜色をしていた空は、もう遥か向こうに仄かにその色を残すばかり。
肩を竦めて藍に染まった通りに出れば、後ろから夕美がついてくる。
「っ!? この寒さ異常ですよっ! ……えと、私あまりこの辺詳しくないんで近くの駅まで送ってもらえると助かりま……」
「えき? えきってなんや?」
妙なところで止まったその声に後ろを振り返る。
すると何故か彼女は明らかな驚愕の表情を浮かべていて。
「……夕美?」
「……こっ……ここっ、こっ……」
鶏か?
袖に手を入れつつ首を傾げれば
「こっ! ここ! どこですかっ!?」
またも物凄い形相で胸ぐらに飛び付いてきた。


