土産話、なんて言う大層なものはないものの、何となく自然と口許が緩む。


「うん、まぁ順調やったわ。町も相変わらず賑やかやったし。それにうちにも寄れたしな」

「うち?」

「あー俺の生家や。暫く帰ってへんかってん」


以前の俺ならこんなことわざわざ口にしなかったと思う。順調だった、それで仕舞いだ。


こうしてすんなり話そうと思えたことに俺自身少し驚いたけれど、少しは前に進めている、と言うことなのかもしれない。


「へー! 良かったですねっ」


唇の上を汁粉色に染めた夕美の笑顔に、素直に胸が温かくなる。


「……ん、せやな」


俺の過去とも今の暮らしからも少し違ったところに位置するこいつだからこそ、本音を溢せたんだろう。


新選組隊士でもない、乱破でもない。


これの傍ではただの俺、だから。


極力椀の中身を見ないようにしながら、そっとその頭を撫でた。


「お前さんもそのうち帰れる、それまでは俺で我慢やで」

「あ……はい…そー、ですね」


へらりと笑ったその顔には僅かな寂しさ。


あんま触れん方が良かったか。


「す」
「でもっ!我慢なんかじゃないですよ! むしろ毎日でも会いたいくらいです! 烝さんに助けてもらってなかったら私、今こーしてここにいませんから!」


これ以上触れてほしくないのか前向きに跳ね除けたのか。


矢鱈と力強く言うそいつに、俺はただ頷くことにした。


「そーか」

「てな訳で恩人さん一口どーですか? やっぱ一人で食べるの悪いし」

「ぅぷ」

「ちょっ!? 大丈夫ですか!?」

「ーーっ! すまんっ! 今あんこはほんま無理ぃっ!!」




危うく汁粉がもっ杯増えるとこやった……。


何かややこを孕んだ女子の気持ちがわかった気ぃする、俺。