土方副長が俺の刃を止めた時、俺はどこまでもついてくと誓ったんや。
あのお方が人々を守ってくださるのなら、俺があのお方をお守りする。
あのお方の造り上げるものを守る為にこの身を捧げる。
あのお方が鬼と呼ばれるのなら俺もまたその一部に。
例えあのお方がその先にあるものを見つめていようとも、俺はただ主に忠義を尽くすのみ。
それが医師を捨てた俺に出来る唯一の人の守り方や。
それが、あの時俺がこの背に背負うと決めた誠なんやから。
「……ふん、ええやろ。左門」
「はい」
おとんに呼ばれたお兄が隣の部屋からおもむろに何かを持ってくる。
重々しく目の前に置かれた物。
それは……
「お前も主君に仕えるなら正装くらい持っとけ。それに懐刀てなんや、折れたらどうすんねん。乱破なら苦無を持て」
黒装束と五寸弱(15センチ弱)の大苦無だ。
や、衣装はそこまで頑張らんでもええんやけど。
報告する為だけにこれ着んのもなぁ……うちそんな畏まったあれちゃうし。
普通の裁付(タッツケ・裾が絞れる袴)で事足りとるもん。
こんなんで屯所内歩いとったら逆にめっさ浮くし。屋根裏専用やん。
……でもまぁ、苦無は京に持ってきてへんかったから助かる。
それにおとんのその気持ちは有り難い。
「有り難う御座います」
折角やしな、使わせてもらおか。
頭を下げた俺に、少しだけ色の変わった声が届いた。
「お前、このあとはどうするつもりや」
顔を上げればそこにあるのは師でなく父であるおとんの顔。
「あ、夕刻には屯留しとるとこに戻らなあかんから昼には出よ思てるけど。寄るとこもあるし」
この大坂で、琴尾に会ってから行こうと思っていたもう一つの場所。
此処と同じく葬式以来になるもう一つの俺の家。家族。
……どんな顔して会いに行ったら良いんかわからんけどな。
僅かに目を伏せた俺に、淡々とした言葉が紡がれる。
「……山崎さんとこからお前に伝言や。
うちには来んでええ」


