「はい、すーちゃん」
「ん」
給仕をするおかんから飯の盛られた椀を受け取る。
これで男三人の朝餉の善が並び、いつもならここで食い始めるのだが。
「君江、折角や、今日はお前も一緒に食え」
そんなおとんの一言で珍しく全員でついた朝餉の席。
味噌汁の味、具材の切り方、炊いた飯の柔らかさ、その全てが懐かしい。
ただ黙々と食べた朝餉の時間だったが、部屋はどこか温かい空気に包まれていた。
「すーちゃん、今のお仕事はどうなん?」
食べ終えた善を下げながらおかんがにこやかに問う。
「あー……うん、充実しとるよ。やり甲斐のある仕事やから」
「そう、ほな良かったわ」
穏やかに微笑んだおかんが重ねた善を持ち障子を閉じると、今度はおとんが漸く口を開いた。
「お前の選んだ主は何て人や」
こっからは俺らだけってことか。
此方を向く双眸を見つめ、すっと居住まいを正す。
「新選組副長土方歳三殿に御座います」
「一度は乱破(ラッパ・忍のこと)の道を捨てたお前が選んだお方や、儂は何も言わん。ただこの人と決めたからには何がなんでもやり通せ。それが出きんならお前は息子でも何でもない、どこでのたれ死のうが知ったこっちゃないからな」
……その言葉に、偽りはないんやろな。
若い頃に甲賀で腕を磨き様々な知識を得たおとん。
おかんと一緒になってその知識を活かして鍼医として落ち着いてからも依頼があれば乱破として動く。
幼い頃からお兄と共におとんの持つ全てを叩き込まれた俺は、いつからか医術のみに生きたいと思うようになった。
医師として人々を助け、琴尾と平穏に暮らす。
ただそれだけを望んで、林烝を捨て、山崎烝として京に上った。
せやのに……おとんは今も背を押してくれる。
厳しいくせに無理強いはせん。
いつも俺らに選択肢をくれた。
父であり唯一の師。
そんなおとんの一言に更に身が引き締まる。
「はい、覚悟は出来ております」


