柔らかな日差しと鳥の声が俺を優しく微睡みから引き上げる。
……う……もぉ朝か。
障子を通して差し込む光から逃れるようにもぞもぞと寝返りをうった。
狭……俺屋根裏で寝たんやったっけ?
……いやいや、んな訳あるかい。ほなこの明るさとぬくさはなんやねんな。
ふにふに じょりじょり
手に触れるのは微妙な感触。
ちょい待ち、ちょっぴり懐かしいこの感じはもしかして……。
沸々と沸き上がる嫌な予感に俺はぱちっと勢いよく瞼を上げた。
そこにあったのは、
「……ぬぁあにやっとんじゃいお兄っ!!」
おとんによく似たゲジ眉男の涎を垂らしたにやけた寝顔だ。
「無意識やねんからそない怒らんでもええやん……久々に会うたのに。ほら、やっぱり愛しい弟の匂いは寝とってもわかんねんて!」
己は犬か。
おんなじ部屋で寝たん忘れとったわ。
てか愛しいてなんやねん! ええ加減弟離れせんと最早変態の域やしな。
三十二のええ年した男が無意識にも弟の布団潜り込むなっちゅー話や。
昔っから気配だけは薄い奴め……。
「そんなん言うてるからいつまで経っても嫁がこんのや」
「つれへんなぁーまぁそんなすーちゃんも可愛いけど。何で妹やないんやろうてたまに本気で思うわぁ」
妹やったらどーすんねん!?
そんなん言うてる時点で立派な変態やぞ。
さぶいぼが止まらんわ!
……あかん、こら間違いなく林家お家断絶や……。
遠い目でキュッと帯を締めたところで襖の向こうにおかんの気配が近付いてきた。
「さーちゃん、すーちゃん、おはようさん。朝餉の仕度も出来たしそろそろ出といで」
「あ、はい」
……ま、お兄がここを継ぐて後押ししてくれたからこそ今俺も琴尾の、山崎の姓を名乗ってるんやけどな。


