じゃり
足元から響く乾いた音が妙に寂しげに聞こえるのは逢魔刻の侘しさ故か。
あえてこの時刻に此処を訪れたのは誰とも顔を合わせたくなかったから。
例えそれが見知らぬ誰かであっても。
此処には、ただ一人に逢う為にやって来たのだから。
敷地の隅にある目的の場所まで来るとそっとしゃがみこみ、汲んできた水を目の前の石にかける。
通りで買った花と小さな紙包みを少し萎れかけた花の隣に供え、俺は静かに手を合わせた。
久し振りやな、琴尾。元気やったか?
なかなか来れんくてすまんなぁ……まぁ誰かしら来てくれとるみたいでちと安心したわ。
やっぱり墓はこっちにして正解やったな。人一倍寂しがりなお前のことや、家族と友垣がおる此処やったらちっとは気ぃも紛れるやろ。
ほんまは俺が世話してやるもんなんやろけど……なかなか、な。
……すまんな。
ゆっくりと瞼を上げれば辺りは紅緋に包まれている。
俺はおもむろに供えた包みを開いて中身を一枚取り出した。
「久し振りに一緒に食お思て。お前のんはちゃんと粟にしといたし」
固そうな音だけを鳴らして岩おこしを食べると、最後の一欠片を包みに戻す。
「いつもの、置いとくな」
ぽんっと頭を叩くように石に触れると冷たい筈のそれが一瞬微かな温もりを手に伝えた気がして、俺は柔らかく目を細めた。
……勝手かもしれんけど、お前なら今の俺もきっと笑って応援してくれとる気がするんや。
今暫く寂しい思いさせてまうけど、いつか俺がそっち行く時はお前に胸張って逢いに行けるよう頑張るさかい。
せやから……も少しだけ堪忍な。
久し振りの逢瀬を惜しむ間も刻々と空は色を移していく。
「……ほな、また来るわ」
そう言い残して、俺はゆっくりと立ち上がった。


