伝え忘れた想い。



「何言ってんの。

バイトしているあたしや庄司からしたらハナみたいな青春を謳歌している部活所属者の方が羨ましいんだからね」



「でもあたしたちお金ないもん!」




我儘を言うハナに金森は顎を上げ、ハナを見下す様に見つめる。



「それは仕方ないこと。

あんたは汗を流して青春をゲットしている。

あたしたちは汗を流してお金をゲットしている」



「金森良いこと言う」



「当然」



何故かドヤ顔の金森。


まぁ金森の言うことは正しい。



人間ないものねだり。



バイトをしている金森やあたしからしたやハナみたいにみんなで何かを目指して頑張っているのは眩しいくらい羨ましい。


でもハナからしたら働いてお金を得て、欲しい物を買うあたしたちが羨ましい。




同じある時間をどう過ごすかは人それぞれだが、

人の過ごす時間を羨ましがるのも無理はない。




「でもさ、庄司や金森みたいにバイトして恋に巡り合うこともしたい」



ハナは目をキラキラさせてあたしたちを見る。

この子意識が夢の国に行ってるわ。



「ハナだって大会で他校の奴らと巡り合ったりするでしょ、それと一緒よ。

それでは、さようなら〜」



金森はあまり自分の恋愛部分を見せたがらないからこの手の話は苦手としている。

だから恋愛話になると逃げるかの様に自分の席に戻って行った。