一つの恋が終わったというのに、
世間は、
始まって間もない夏休みに、浮き足立っている。


親友の亜希でさえ、都合をつけては海へと出かけ、

琴乃も度々誘われたが、
そこには常に、紺野も慶太も存在して居るため、
いつも頑なに断っていた。


もちろん、駿祐と別れたことは、紺野も慶太も知っている。

(亜希が黙っていられるワケがない…。)


そして亜希は、二人から駿祐の情報を仕入れると、
頼みもしないのに、琴乃へ逐一報告してくるといった構図が、自然に出来あがっていた。


その話によれば、
駿祐が近いうちに帰国し、大学に戻る決心をしたとか…


もちろん、水泳を続けながらも、
日本代表を一筋に目標としていた昔とは違い、

柔道整復師の資格を取るため、国家試験のパスをしなければならないらしく、
その勉強と、
他にも学科を増やすなどして
なんだか大変そうだ。


駿祐のまなざしは、既に
将来を見据えて、ふたつになっていた。



今や、それぞれに成長した、琴乃と亜希と紺野の三人で居る時も、
もう、高校の時のように気兼ねすることもなく、
平気で、琴乃の前でも、
駿祐の近況報告や頑張りを讃えた言葉、しまいには悪口まで話せる様になっていった。


そして帰国した頃は、

「リサとこじれたか?」と、

そんな話題も冗談にできるようにもなり、
そんな仲間を有難く思っていた琴乃は、
いつか、駿祐とも友達になれる日が来ると信じるのだった。